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OPINION

紅麹問題で浮かび上がる多くの課題

小林製薬の紅麹との因果関係が疑われる健康被害が発生し、大きな波紋を広げている。回収対象となった同社のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」だけでなく、原料として同社の紅麹を使用した食品も回収を余儀なくされ、その対象となる企業や商品数は膨大に増えた。冷凍食品は、一部PBを除き大きな影響を免れているが、メーカー各社は2次原料や3次原料まで遡り、同社紅麹の使用の有無について確認作業に追われた。
 3月29日に厚生労働省から「プベルル酸」が健康被害の原因となった可能性について言及があったが、あくまでも可能性の1つであり、4月上旬現在、未だ不透明なことが多い。原因究明にはまだ時間が必要と思われるが、回収前・回収後の小林製薬の対応を含め、既に様々な問題点が浮き彫りになった。
 ざっと思いつくだけでも、①原料を由来とする問題の影響の大きさ②回収に至る判断の遅れ③当該商品が「機能性表示食品」であること④海外における対応⑤風評被害の懸念――などが挙げられる。

機能性表示食品のあり方を再検討

①は冒頭で触れた通りだが、当該原料を使用していなかった企業も、原料まで遡って確認できる体制の重要性が改めて問われた。
 ②については、医師から健康被害の可能性について指摘されてから回収まで2ヵ月以上を要しており、多くの批判がある。あえて言えば、企業にとって、因果関係が明確でない時点で回収を判断するのは難しいのかもしれない。しかし、健康被害の拡大を食い止めるためには、注意喚起を含め早い時点でのアナウンスが必要だった。
 ③の「機能性表示食品」は「特定保健用食品(トクホ)」とは異なり、国が審査を行うのではなく、事業者が安全性や機能性に関する根拠を届け出るものであり、問題が生じた場合の責任も国ではなく事業者にある。しかし、制度自体は国のものであるため“国が認めた”という漠然としたイメージがあることも否めない。成立の時点から問題を指摘する声も多かったが、今回の件を受け、消費者庁は機能性表示食品のあり方について検討する対策チームを立ち上げた。
 ④はあまり報道されていないが、小林製薬による2回目の記者会見において、海外の記者が「海外から日本に来て当該商品を購入した場合はどうするのか」「台湾でも健康被害が発生しているが、どう対応するのか」と質問していたことが印象に残った(小林製薬は「日本国内と同様に対応する」と回答)。冷凍食品も今後は海外販売が増えると予想されるが、国内だけでなく、海外における品質保証体制の構築も重要になると認識させられた。
 ⑤については、同社製以外の紅麹や、それを連想させるものに対しても不安感が広がっている。同社の紅麹は食品原料であり、使用基準が定められた食品添加物の「ベニコウジ色素」とは別物。また、日本の食文化において広く使用されてきた「麹菌」も「紅麹菌」とはまったく別物であり、それらを伝えることは重要と思われる。
 今回の件の収束に向け、まずは原因究明が待たれるが、当面は食に関わる事業者に少なからず影響を与える可能性がある。様々な面から今後の動向への注視が必要といえる。

(吉田)