OPINION
セブン&アイグループの分岐点
セブン&アイHDは9月1日、祖業であるイトーヨーカ堂などを傘下に収めるヨークHDを売却した。これによりセブン&アイは国内外において、セブンーイレブンの成長戦略に専念する。
セブン&アイは以前から、“モノ言う株主”などからスーパー事業の売却提案を受けてきた。コンビニ事業が好調だった半面、スーパー事業が不調で、グループの足かせになっていたからだ。その提案を退けてきたが、カナダのクシュタール社からセブン&アイ本体の買収提案を受けたこともあり、企業価値の向上を検討。ヨークHDを売却した。セブンに集中する環境になったことで、今後の戦略はどうなるのか。
10月に行われた「IR day」では、ヨーロッパの未進出の国・地域への出店を検討していると発表。大きな成長の柱にしたいと力を込めた。セブンは現在、19の国・地域において、約8万5000店を展開している。成長戦略としては、日本で取り組む「食」を中心とした店舗を各地で展開。出来立て商品の提供や、ベンダーとの商品開発等を推進する。オーストラリアでは現地のライセンシーを24年に買収。日本の手法を積極的に取り入れ、成長途上にある。
一方、国内はと言うと、順調とは言い難い。今上期の平均日販は前期比4000円増にとどまった。ローソンの3万円増、ファミリーマートの2万2000円増に比べると、日販ではまだ長じているとはいえ伸びは物足りない。これまでは商品の質に注力してきたが、物価高で節約志向が高まる中、軸が揺らいでいるようにも見える。従来のような圧倒的な価値や驚きのある商品・サービスに期待したい。
ヨーカ堂はGMSから撤退し、フード&ドラッグに専念
ヨークHDは、アメリカのファンド会社であるベインキャピタルが買収し連結子会社化した。9月に行われた戦略発表会見では、ベインキャピタルの担当者も出席し、今後の取り組みについて語った。
会見の中で、イトーヨーカ堂がこれまで展開してきたGMS事業からの撤退を発表。今後はコミュニティショッピングセンター(CSC)として展開し、テナントなどはグループ企業のクリエイトリンクが運営、ヨーカ堂はフード&ドラッグ事業に専念する。
ヨークHDはスーパー事業のほか、外食、雑貨など約30社を傘下に持つ。会見でヨークHDの石橋誠一郎社長は「セブン&アイではスーパー事業の売上構成比が低く、サポートも弱かった。ヨークHDでは各社の重要性が高く、ベインキャピタルとともに成長に向けて取り組んでいきたい」と意気込んだ。牽引役と見られるヨーカ堂は店舗改革を完了し、今上期は黒字化を達成。ヨーカ堂の業績が、HDの成長の鍵となるだろう。
成長への期待が高いのが、セブン&アイの持分法適用関連会社となるセブン銀行だ。セブン銀行は10月に伊藤忠商事と資本業務提携を締結。伊藤忠商事の子会社であるファミリーマート店舗にセブン銀行のATM設置を計画しており、これにより規模が大きく拡大し、ATMの台数は業界最多となる見込み。
各事業の分離が加速し、大きな分岐点に立つセブン&アイグループ。それぞれの道筋に注目したい。
(杉本)
